まいたけ見聞録

脳菌なので世の中のことはよくわかりません

海水中のDNAを解析するだけで魚の8割を検出できるように!目視では探せない幼生の生態まで明らかになる?

海水中のDNAを解析することによって、たった一日の調査で、生息していると思われる魚種の8割が検出されたことがこのほど京都大学神戸大学などの研究グループによって報告されました。論文のタイトルは以下のようになっていて“Environmental DNA metabarcoding reveals local fish communities in a speciesrich coastal sea.” (環境DNAメタバーコーディングが明らかにする種の豊富な日本沿岸の魚類相) doi:10.1038/srep40368

http://www.nature.com/articles/srep40368こちらから読むことができます。

何がスゴいのか自分なりに調べてみたので紹介したいと思います。

 

 

 

環境サンプルからDNAを回収して解析する学問はメタジェノミクスと呼ばれています。近年、DNA配列を読み取る技術の発展とともに様々な環境下に存在するこれまでに知られていなかったような生物環境が明らかになっています。

環境(environment)から得られるDNAはeDNAと呼ばれています。

水中では主に魚の排せつ物や粘液、はがれたうろこや表皮などの細胞からDNAを得ることができます。

このeDNAはごく微量であるためポリメラーゼ連鎖反応(PCR)という反応を行うことでDNAを検出できる量まで増幅させることができます。

増幅された様々な生物のDNAが混ざった液に含まれるDNAの配列をシーケンサーと呼ばれる機械ですべて読み取ることで、元の環境に生息している生物を捕獲や目視による確認なしに調べることが可能となります。

 

今回の研究は京都府北部の舞鶴湾というところで行われました。

舞鶴では14年間にわたって2週間に一度潜水・目視調査が行われており、どのような魚が生息しているのかについてのデータが収集されています。

 今回はそのデータと比較してこの時期に生息しているとされる80種類の魚種のうち6割余りを検出することに成功しています。またこの海域でこれまで見つかっていなかったような魚種もいくつか検出されていて、その多くは幼生の状態でその海域にいることが考えられるようです。幼生の魚については目視で確認することが難しい場合もあるのでこの技術によって調べることが簡単になりそうです。

環境にほとんど影響を与えずに網羅的な解析を様々な地点で簡単に行えるためこれからこの技術がどんどん広まっていくことが予想されます。

今回の結果によって潜水などによる調査が必要でなくなるわけではないようです。たとえば遠洋で取られた魚が舞鶴港にやってきて、食卓にならんで食べられたりしたのち排水されて海に流れた場合、本来生息していない魚のDNAが検出される可能性もあります。

そのためこれまでのデータと合わせて比較したりすることでさらに精度を上げていく必要があるようです。