やる気スイッチが発見された?壊れると意欲障害になるらしい
「やらないといけないもの」ほどなかなかやる気って起こらないですよね。。。。期限が差し迫っていてそれをやらないことで重大な問題が起こるとしても気が乗らないのはなぜなんでしょうか。
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授らによるマウスを用いた研究によって、脳内に存在する意欲障害にかかわる部位、いわゆる「やる気スイッチ」が特定されたそうです。
以下内容引用です。
意欲障害は、認知症や脳血管障害など、多くの神経疾患で見られる病態ですが、その原因については、脳が広範囲に障害を受けたときに起こるということ以外分かっていませんでした。研究グループは、大脳基底核(注1)と呼ばれる脳領域の限られた細胞集団が障害を受けるだけで、意欲が障害されること、この細胞集団が健康でないと意欲を維持できないことを発見しました。
今後は、この意欲障害モデル動物を用いて、これまで治療法が全く分かっていなかった脳損傷後の意欲障害における治療法を探索することが可能になります。
神経変性による認知症や脳血管障害など脳に障害が起こった場合にいわゆる「やる気がない」意欲障害が起こることは知られていましたが、脳のどの部位が「やる気」にかかわっているのかよく分かっていませんでした。今回はそのうち少なくとも1か所が明らかになった、というものです。
研究では臨床結果から意欲障害とのかかわりが予想された線条体のドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロンというものに着目しています。
ヒトの線条体(Life Science Databases(LSDB) Anatomographyより)
線条体
大脳皮質と視床、脳幹を結び付けている大脳基底核の一部で運動の制御や意思決定などにかかわるとされている部位を指します。線条体から外部に情報を伝える際に通る経路は2種類が知られており、今回はそのうちの一つドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロンに焦点が当てられています。
ちなみに大脳基底核の腹側淡蒼球(たんそうきゅう)とよばれる神経細胞は、得られる報酬を予測する機能をもっており、やる気にかかわっていることがすでに知られています。
任意のタイミングでマウスのドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロン細胞のみを特異的に破壊するような毒性を持った薬剤を与えて、その前後でやる気を定量的に測るために比率累進課題を行っています。比率累進課題の内容はレバーを押すとエサが出るが、次のエサを手に入れるには前よりも多くレバーを押す必要があるようになっており、エサを得るためにレバーを何度あきらめずに押したかで比較しているようです。
その結果線条体の腹側で17パーセントの細胞が死ぬと、意欲障害が起こることが分かりました。
ヒトの脳内にもドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロンと同様のニューロンが存在しているので、今後メカニズムの研究が進むことでやる気を改善できるような薬剤が開発されるかもしれませんね。