まいたけ見聞録

脳菌なので世の中のことはよくわかりません

食虫植物はどれも似たような方法でしか進化できなかったかもしれない?

虫をとらえる捕虫葉などの捕虫のための器官をもつ植物は一般に食虫植物と呼ばれます。ウツボカズラなどがとても有名ですね。

食虫植物はもともとは普通の植物が、例えば窒素が不足するような環境に適応するために昆虫などの小動物を栄養源とするために進化したと考えられています。すくなくとも世界にシソ目ツツジカタバミナデシコ目イネ目の5目18属が知られています。日本でもシソ目タヌキモ科(200種以上見つかっており、すべて食虫植物。タヌキモやムシトリスミレなど)や、ナデシコ目のモウセンゴケ類などが生息しています。

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このように食虫植物は様々な種類がいますが、普通の植物から食虫植物への進化は1回だけ起こったのではなくそれぞれの祖先種で独立に進化が起こり、この進化はすくなくとも8回起こったと考えられています。

このように独立に似たような進化が起こる例は収斂進化と呼ばれています。

有名な例として哺乳類におけるオーストラリアの有袋類と他の地域の真獣類の類似があげられます。哺乳類が誕生したころ世界中の大陸はつながっていたため、初期の哺乳類は世界中に広がりました。初期の哺乳類は現在真獣類と呼ばれる哺乳類のグループにとってかわられました。現在の南極とのみ接していたオーストラリアには真獣類はやって来れず、カモノハシや有袋類などの原始的な哺乳類が住みつき、他の地域とは違った哺乳類の進化が起きてきたわけです。

しかし世界中の真獣類とオーストラリアの有袋類を比較すると、生息している環境が近いと姿や生態がよく似ていることが分かります。たとえば樹上で生活するコアラとナマケモノやどちらも菜食性で睡眠時間も長い動物です。別の哺乳類の名前を冠せられている有袋類も多く、独立に環境に応じて似たような進化がおこったことがわかります。

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 独立に進化してきた食虫植物がどのように遺伝子などの遺伝情報を変えることで食虫植物となったのか、その過程について調べた研究が発表されているので紹介したいと思います。

www.nature.com

上の研究ではフクロユキノシタという、カタバミ目に属し捕虫葉と平面葉の両方を作る食虫植物に着目しています。フクロユキノシタのすべてのゲノムを解読し、そのゲノム情報をもとに捕虫葉と平面葉ではたらく遺伝子を比較することで捕虫葉を作るために必要と思われる遺伝子を見つけています。

また様々な系統の食虫植物の捕虫葉から分泌される消化液(消化酵素)についても調べたところ、7つの消化酵素のうち少なくとも5つは植物がもともとたくさん持っている耐病性遺伝子のうち特定の同じグループの遺伝子が消化酵素として新しい機能を持つように進化をしたことが分かり、そのうちの3つは消化酵素アミノ酸の並びも似たように進化していることが分かりました。

独立に進化が起こったにもかかわらず進化にかかわった遺伝子に非常に高い類似性が見られたことから食虫植物が進化するためには非常に限られた道筋を通る必要があったといえそうです。

今後食虫植物にたいする研究が進むことでたとえば人為的に遺伝子を組み替えることで食虫植物を新たに作れたりするようになるかもしれませんね。